筑波大学2019年スクールガイド
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07後藤 嘉宏 教授(知識科学主専攻) 私のゼミ(研究室)は社会学、メディア論、思想史のゼミという看板を打ち立てています。社会学は非常に間口の広い学問です。人が複数いれば、もうそれは社会ですので。よって多岐にわたるテーマが想定できます。対象はほぼ何でもOKです。人々の行為の意味を理解するという方法論だけは採用して貰いますが、これについては2年次の授業「メディア社会学」で詳しく説明します。 他の人のやったことのないことを、自分なりの切り口で解決できるテーマのある学生を受け入れてきています。特に「こんなこと研究になるの」と他人からいわれるようなものでも、そこに拘りがあってどうしても研究したいという学生と共に学んでいきたいと思います。 過去のテーマのタイトルを見ると「コスプレにおける立場の違いをもたらす要素」「『an-an』読者による恋愛マニュアル記事の読み方をめぐる研究」「『白雪姫』の児童書におけるストーリー展開の比較-ディズニーアニメ等の影響に着目して-」「BL書籍を読みつづける理由 ―読者の自己意識と物語における読者の視点―」「ラーメン二郎の流行と定着についての考察」等、サブカルものが多いですが、王道の研究をする人もいます。際物、サブカルものであっても、傍流から主流に光を当てるというか、マイナーな対象の研究から本質論に迫ることを私は求めます。したがってどちらも目指すところは、ほぼ同じです。 自分なりの気づきを大切に育みたい学生さんの、「こんな研究やってみたい」を応援するゼミです。 じつは私自身の研究は中井正一という国立国会図書館初代副館長で、日本最初のカラー映画を作った美学者を、思想史的に地道に研究しています。でも中井は多様な学問、そして多様な人々の編みだす文化を楽しみ、そのような多元性によって民主主義の基盤を構築しようとした人です。中井は学問分野横断的な同人誌や、労働者・学生といった読者の投稿で紙面を構成する新聞の発行を通じて、他の人の発想を発酵させ引き伸ばさせることに長けた人でした。したがって私が中井の精神を引き継いでいるのなら、そういう彼の姿勢に少しでも教育研究の場で近づかなければという思いで、ゼミを運営しております。自発的な学びを楽しめる学生さんとの議論を心待ちにしております。鈴木 伸崇 准教授(知識情報システム主専攻) 当研究室は、主にWeb上のデータを対象に、データの構造や繋がりに着目して研究を進めています。では、この「データの構造や繋がり」とは何でしょうか。Web上の代表的なデータとしてHTMLやXMLがあります。これらはタグを使ってデータを記述します。タグの入れ子関係に着目すると、このようなデータはツリー構造として表せます。より広い視点で捉えて、個々のWebページを1つの実体(ノード)とみなし、Webページ間に張られているリンクをエッジと考えると、Web自体を1つのグラフとして表せます。ほかにもDBpediaなど,グラフとして表せるデータは数多く存在します.このようなデータのもつ構造はそれ自体が簡潔で美しく、かつ膨大なデータを効率的に扱う上での重要な手がかりとなります。当研究室では、Web上のデータがもつ構造や繋がりに着目し、構造の類似性に着目したデータの検索や分類、大規模グラフデータからの概形抽出、大規模データ上で経路探索を効率よく行うためのアルゴリズムなどについて研究しています。  当研究室は、できるだけ自由な雰囲気の中で研究を進めていけるように心がけています。しかし、自由だからといって研究を怠けてしまうような学生はおらず、自分のペースを保ちながらも真摯かつ着実に研究を進めています。若い人の集中力には目を見張るものがあり、私の予想を大きく超える成果が得られることも珍しくありません。研究活動を通じて、微力ながら若い人たちの可能性を伸ばすお手伝いができればと考えています。 研究が面白いのは、未解決の問題に対して自分で解を見つけるところです。卒業研究では未解決の研究テーマに取り組みますので、その過程では多くの未知の問題に遭遇します。その問題の解決を通じて培った問題解決能力は、実社会でも必ず役に立つものと思います。意欲ある方々のご参加を心からお待ちしています。呑海 沙織 教授(情報資源経営主専攻) 呑海研究室では、図書館を中心とする知識情報基盤に関して研究を行っています。知識情報基盤とは、あらゆる学習・教育・研究に必要な知識や情報を蓄積・共有・活用することによって、知識情報社会を支える社会的基盤です。長い歴史をもつ図書館について、歴史的時間軸および地理的空間軸から、知識情報基盤の社会的役割を探ります。 現在は、溝上研究室と連携しながら、「超高齢社会と図書館」をテーマとして研究しています。日本は、高齢化先進国であるにもかかわらず、高齢者を対象とした図書館サービスも進んでいるとはいいがたいのが現状です。そこで呑海研究室では、超高齢社会における図書館モデルを構築すべく、「認知症にやさしい図書館」や「コミュニティ主導型図書館サービス」などさまざまなアプローチからプロジェクトを展開しています。 最近の卒業研究のテーマとしては、「公共図書館における人型ロボットによる高齢者サービス」「公共図書館の高齢者サービスにおける自分史づくり支援の意義と方法」など「超高齢社会と図書館」に関するもののほか、「移動図書館の役割の再考」や「児童図書館研究会における児童図書館員養成の変遷」などの図書館文化史に関するもの、「高等教育機関における学習支援空間のゾーニング」「英国の大学図書館における学習支援空間:JISC のプロジェクトを中心に」などの大学図書館に関するもののように多岐にわたっています。 卒業研究は、これまで学んだものを基盤として積み上げ、卒業論文という形で表出するという意味で、勉学の集大成であるといえます。能動的に取り組めば取り組むほど、思考力や表現力、コミュニケーション力が培われます。論文執筆に終始するのではなく、卒業研究にとりくむ過程でぜひ多くの力を身につけてください。研究室訪問溝上教授とSporting Memories groupのみなさんと

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